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エスプレッソを片手に夏休み前のお別れの挨拶 -イタリアの夏休みの話-

2016.08.08

皆様、こんにちは。

いよいよ8月。イタリアでは今月、観光業や一部の流通と金融、マスコミ以外、大半の企業は夏休みのため3週間はクローズとなります。多くの社員はその前後にもう1週間程度の休暇を追加するため、会社が再び正常に機能しだすのは9月に入ってからです。夏休みはマックス9日間の日本の会社員からすれば、この状況は異常と言わざるを得ませんが、イタリア側からすれば猛暑のなか休まず働く日本人の方がよほど異常と言うことになります。

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【CAFFE BORBONE】 夏も海辺でエスプレッソ。

この時期、まさに8月第1週は、あちらこちらのBARで常連さん同士がエスプレッソを片手に夏休み前のしばしのお別れの挨拶を交わしあっています。
「どこ行くの?」「いいね!」「お戻りは?」といった、他愛もない会話が風物詩のようにあちらこちらで聞こえます。
今年は、早いところで7月30日の土曜から、カフェ・ボルボーネのアロマティカ社含め、ほとんどの会社は8月6日の土曜からほぼ8月いっぱいはお休みとなっています。

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【BARの常連と休暇前の挨拶 inミラノ】

最近は改善したと言われていますが、2000年初頭位までは、ミラノでは大きな駅周辺を除けばスーパーやホテルまでもがクローズし、8月は完全にゴーストタウン化していました。そんな中、空き巣が横行し、休まず出勤していた日本人駐在員が彼らに出くわすようなことが頻繁に発生したため、多くの日本企業でも駐在員の危険を考慮して、結局、夏は3週間程クローズしています。

働き盛りの日本のサラリーマンがこんなイタリアに駐在を命じられ、いきなりバカンスシーズンをむかえると、このイタリア的夏期休暇の過ごし方がわからず戸惑うことになります。そもそも、憧れはあっても、どうすれば2週間も3週間も仕事をせずに過ごせるのかがわからないのです。

自分も駐在1年目の7月末頃、BARで、「夏休みはどこに行くの?」、と声をかけられても、日本的生活感が抜けておらず、また本当に何をしたらよいかが分からず、「家で休みますよ。」と誇らしげに答え、この機会にミラノの街でも研究しようなどと考え、家族と二人、実際に家で過ごしました。

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【Esodo 民族大移動1】 7、8割の人は海を目指して移動するため見られる

しかし、街から人影がなくなり、周辺の商店もスーパーも、BARをはじめとする飲食店さえもが休みのため、備蓄していた食品も1週間で底をつき、唯一営業しているお店があるドゥオモや中央駅周辺まで買出しへ行くにも、市内のバスや市電、地下鉄さえ運行本数が激減しているため一苦労といった悲惨な日々を体験しました。赴任して5ヵ月しか経っていなかったため自家用車もなく、一時帰国というわけにも行かなかったのです。

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【Esodo 民族大移動2】 日本でいうお盆のラッシュ 

話を戻しますが、8月に入るとすぐに『Esodo』と言って、イタリアではあちらこちらで民族大移動のような光景がみられます。日本で言う『お盆のラッシュ』のようなものです。
7、8割の人は海を目指して移動するため、南方面への道は大混雑となる一方、ドロミテ方面、シャモニーやサンモリッツ、インスブルック等のアルプスへの道は比較的空いていたりします。イタリアの人にとって夏はとにかく海なのです。サルデニア、シチリアやプーリア、お金に余裕のある人達にはイビーザやカライビ、サントロペといった海外のシーリゾートも人気です。

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【アルプスの別荘】

多くの人が別荘を所有し、持っていない人でも肉親や友人の誰かが持っていて、そこに招待されたり、友人と共にアパートをレンタルしたりします。 流石に2週間3週間もハイシーズンのホテルで過ごすというような不経済なことはしません。そして、仕事を忘れ、家族や友人と本当に何もしない毎日を楽しく過ごすのです。

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【海辺のBAR と CAFE BORBONE】

朝は遅めに起き、皆で近所のBARへ行きカプッチョとブリオッシュで朝食。それから海岸に行って昼まで海水浴、付近のスーパーや農家で食料を調達し、皆でパスタをつくって昼食、昼寝、また海水浴、戻ってシャワーを浴びたら街へ繰り出しリストランテで食事、散歩、就寝といった日々です。2週間を友人とこのように海辺で過ごし、残り1週間は高原や湖の別荘で家族と過ごす、といった変化をもたせるケースも多々あるようです。

自分も駐在2年目以降から、当初は未だ戸惑いもありましたが、友人にマジョーレ湖畔のホテルを取ってもらったり、カプリ島の別荘へ招待されるなどしてバカンスに慣れ、3年目にはイタリア人の友人家族とプーリアで、4年目には家族二人だけでサルデニアでアパートを借りて過ごしたりと、夏休みをエンジョイできるようになりました。

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【バカンスに人気のカプリ島】

このおかげで、ミラノでは知りえない美しい風景に触れ、田舎のイタリアの生活や味覚を体験できただけでなく、家族との絆、友人一家との友情が深まり、また、新たな友人達との出会いによって人間関係が大きく広がりました。溜まったストレスはこの3週間で全て一旦洗い流され、9月には、ややボケも残りますが、心機一転できています。

9月の第1週目は、あちらこちらのBARで「おかえり!」「休暇はどうだった?」という挨拶がエスプレッソコーヒーの香りと共に聞かれ、イタリアの1年の後半が本格始動します。

帰国して10年余り・・・毎年夏が来ると思いだすあの3週間。せめて2週間だけでも、ここ日本で皆が夏休みを取るようになれば、色々なことが好転するような気がします。